小説の題名

副題などがあったらご記入下さい。











笑顔と 涙と 喜びとが

あちこちで 飛び交う



そこには確かに 俺たちがいた











普段はあまり使われていない、校門横の駐車場も、今日ばかりは満車状態。
部外者である事は自覚しつつも、俺はそこに車を停める。

学校関係者以外の使用が禁じられている駐車場。
いつもなら、すぐさま尋問に来る職員も、今日は姿を現さなかった。



「うわー、すっごい車。さっすが卒業式ね」



助手席に座る彼女は、もの珍しそうに辺りを見回す。
さっきも確か言っていた。「高校に来るなんて何年ぶり?」なんて。

そう。俺たちが、この高校を卒業してから、もう数年。
余程の用事でもなければ、訪れないであろうこの場所。



だが、俺は。
この懐かしい風景を見に、何度も訪れていた。



歓声が上がる。
音頭と共に、宙に持ち上げられる身体。

その隣では、涙を堪えながら、握手を交わす姿。
部活の先輩後輩だろうか。

眺めながら、甘酸っぱい気持ちに、心が満たされる。
様々な思いで、皆この高校を去っていくのだろう。



目を閉じれば、浮かんでくる。


あの頃の俺たち。

放課後、死ぬほど走りこんだグラウンド。
他のヤツらが耳を塞ぐほど、声出ししたベンチ。

授業中に外を眺めていて、何度も当てられていた、校舎の端の窓辺。
サボる時のたまり場だった、非常階段の裏。

そして。

隣で笑っていた、ショートカットの彼女。



「なんつーか、アレだね。眩しいやね」


「な、なんだそりゃ」



無言でいたかと思いきや、妙な口調で語りだす彼女。
あの頃、隣で笑っていた、ショートカットの彼女。



「だってやっぱさ。戻れないじゃん? あんな若々しい時代。
 手に入らないものって、光り輝いて見えるでしょ?」


「…………」



そう言って、視線を再び子供らに戻す彼女の横顔は、
高校時代よりも、大人びていて、綺麗だった。



ああ。そうなのかもしれない。
俺は唐突に、悟った。



こうして、俺が高校をよく訪れていたのは、
ない物ねだりを、していたからかもしれない。

こうして、俺が高校をよく訪れていたのは、
いるはずのない自分を、見つけ出したかったのかもしれない。


無邪気で、無鉄砲で、どこまででも走っていけたから、
逆に、ずっとそこに留まっていたかったのだろう。


部外者として、車から校舎を眺める自分。
それこそが、今現在の自分なのに――



「良かったね、今日卒業式で。
 普通見れないじゃん? 参加もしていない卒業式って」



彼女が笑う。
ふわりと、薄桃色の頬に、髪が散った。

ショートカットだった彼女は、今はセミロング。
そんな事さえも、改めて気付いてしまった。



大事なのは、あの頃隣にいた彼女じゃない。

今、ここにいる、セミロングの彼女、ただ一人なのに。



「本当だな」



本当に。
今日が卒業式で良かった。



泣いて笑う子供たちの間に、俺たちの姿を見い出した。


そして、脳裏から段々と、
制服姿の俺たちの姿が消えていった。



残ったものは、車の運転席に座る、二十四歳の俺と、
助手席に座る、同じく二十四歳の彼女。

背広姿も様になってきた。
化粧した顔も見慣れてきた。



だから。
俺は、彼女に向き直った。







「なあ」


「何よ」







「結婚しないか?」







俺はようやく。

高校を、卒業できた。




















end.

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